パイプタバコ所感
 去年の4月だったかな、このサイトでおれが吸ったパイプタバコの感想文みたいなのを書いたけど、あの文章がとてもとても恥ずかしい。まあおれ文章ヘタクソだし、このサイト、書いてあること恥ずかしいことだらけじゃねえかって冷や汗の数かぞえだしたらキリがないわけなんだけど、そのなかでもずっと気にしていたことのひとつがこれ。いつか訂正したいなあと思いつつ、なんとなくそのままだったんだけど、思い立ったので、いま訂正しようと思います。
 なにをどう気にしていたかっていうと、キャプテンブラックっていうタバコの感想なんだけど、あれ、匂いは甘いけど、味はしぼったゾーキンの味なんて書いてる…。甘いというよりはニガいだって…。
 たしかにあのときのおれにはキャプテンブラックがマズくてマズくて、ゴールデンバットとまぜ合わせて薄めてみても不快な味はなくならず、結局吸い切れなくて捨ててしまっておりました。このタバコをみんなが甘いあまいというのはなんでなんだろうってずっと疑問だったわけなんです。
 で、これはけっきょく吸いかたの問題だったということに、その数カ月後に気がつく。
 ネットなどでパイプタバコの吸いかたについて書かれている文章をいろいろみると、パイプでタバコを美味しく吸えるようになるのに、だいたい1ヶ月くらいかかるとある。それくらいの修行の必要があるというような感じのことが書いてあります。つまりひと月くらい試行錯誤をくり返すと、初めて自転車に乗れるようになるときみたいに、あるとき突然タバコが美味しくなる。吸いかたがわかる瞬間があるようなんです。
 で、当時のおれは4ヶ月くらいタバコを吸ってきたわけなんだから、もうすっかり吸いかたもわかったつもりになって、あれこれ吸った銘柄の感想文なんぞを書いてみたわけなんだけど、残念無念、じつはまだちゃんと吸えてなかったってことが、その5ヶ月後にわかります。
 5ヶ月後っていうと、つまり9月ですね。いまからちょうど1年まえ。あー、パイプってこうやって吸えばいいんだって、突然納得できた瞬間があって、そしてそのあとに、うわー、タバコってこういう味だったんだー…ってその美味さに驚いた瞬間がやってきました。これがいわゆる、初めて自転車に乗れた瞬間みたいに、パイプの吸いかたがわかった瞬間だったのかもしれない、というような気もいたします。つまり、一般的に1ヶ月くらいで体得できるといわれているパイプの吸いかたなんだけど、おれはなぜか9ヶ月もかかってしまったということなんでしょうかね。ちょっと遅い。いやはや…。
 それで、そのあと、あのニガい思い出だったキャプテンブラック、もしかしたら吸いかたに問題があったのかもと、もう一度買って吸ってみたら案の定、確かに多くのひとがいうとおり、匂いだけでなく、味もしっかりちゃんと甘いタバコだったっていうわけなんです。それはもう生クリームを煙で再現したみたいな味ではないかとすっかり感動してしまいました。こりゃまいったまいった。ということで、つまりあのとき感じたニガい味は、吸いかたがわかってなかったってだけだったわけだ。おもしろいねタバコって。ごめんねキャプテン、訂正させてもらうよ。

 というわけで、去年の恥を告白いたしましたので、おつぎはまたまた恥の上塗り、最近吸ってるタバコの感想でも書いちゃおうかな。やめときゃよかったってあとでまた思うかもな。
 ま、自転車に乗れるようになったひとも、みんながみんな上手な乗り手になれるわけでなし、自転車レーサーになるひともいれば、ママチャリで買い物に行ければ充分ってひともいる。あれ以来、パイプのあつかいが、すこーしわかったつもりになっているけど、やっぱりまだまだおれはヘタクソなんだろうな。それは承知している。あいかわらずコーンパイプ中心だしな。
 だいたいわかんないことだらけの初心者だからこそ、こういう文章を書いてみたくなるんだろう。パイプタバコの世界は謎だらけの巨大な迷宮のようだから、そのなかでじぶんが迷わないように、ときどきこんな文章を書くことで、旗を立てているんだと思う。いわばじぶんのための文章。パイプスモーキングのすべてを理解できてしまったベテランスモーカーだったら、初心者に質問でもされないかぎり、みずから進んでこんな文章書かないだろうな。



  


 写真左の奥の丸缶は、マクバレンの「飛鳥」。これ1年くらいずっとお気に入り。
 もともと飛鳥はJTがつくっていた日本のパイプタバコらしいのだけど、JTがパイプタバコをつくるのをやめてしまったので、それ以来、デンマークのマクバレンがつくっているんだそうだが、そのJT時代の飛鳥といまの飛鳥、全然味が違うらしい。でもおれはJT時代の飛鳥を知らないので、なんともいえない。だから最初のうちはずっと飛鳥は買う気になれないでいた。っていうのは、なんか、飛鳥を買うと、通のひとから、飛鳥はやっぱりJT時代のほうが美味かったんだよね、いまの飛鳥はダメさ、なーんていわれそうな気がしてしまってたんだな。憶病者なもんで、そういうもう手に入らないものを誉めたたえていまを否定するタイプの通のひとたちがいたら恐いなーなんてすぐに思っちゃうもんでね。
 でも実際はそんなことない。おれがよく行くタバコ屋のおやじさん、いまの飛鳥がお気に入りみたいで、おれが飛鳥買うたびに、「飛鳥はいいんだよねー」っていうから、おれもすっかり安心して飛鳥の煙りに身を任せることにした。

 写真下、左のふたつは、ボルクムリーフのウィスキーとウルトラライト。このふたつは最近のお気に入り。
 ボルクムリーフは、パイプタバコを扱っている店ならどこにでもおいてある銘柄で、あまりにありふれているから、いままでずっと吸ってなかった。パッケージも地味だし、初心者向けのつまらないタバコっていうイメージがあった。でも、タバコ専門店がどこも閉まっているとある水曜日、ふと入ったパン屋でこのウルトラライトが売ってたので、買ってみた。
 ウルトラライトはバニラ着香の軽いタバコっていうイメージがあったから、あのキャプテンブラックみたいなお菓子を煙で再現したような味なのかなって思って吸ってみたら、全然違った。けっこうクセのある味。タバコの臭さとか、タバコのほろ苦さを感じて、最初はちょっとイヤな感じがした。
 でもけっきょくボルクムリーフっていうのは、そういうタバコみたい。タバコ味のタバコ。あーそっか、なるほどって思ったらめちゃめちゃ美味しくなった。おれにとっては、タバコの味の基準みたいな感じに思えてきて、現在の常喫タバコ。

 となりはローズバッド。バラの花びらが入っていて、バラの香りがするタバコ。
 ま、悪くない。

 そのとなりがスタンウェルのメランジ。これ、お気に入りだったけど、だんだん飽きてきた。
 なんか、すごくあざやかなキャラメルの匂いが新鮮で、それがずっと気に入ってたタバコ。

 つぎはハーフアンドハーフで、これはときどき買うなあ。初めて買ったのもこれだったし、なんで買うんだろう…。すごく美味いかっていうと、そういうわけでもないんだけど、コーンパイプのイメージと合うのかなあ。でも、コーンパイプでハーフアンドハーフっていうと、なんか進駐軍くさい感じもしちゃうんだよなあ。おれはなんでこのタバコを買うのか、これは謎だ。うん。

 最後は、オレンジドリーム。匂いも味もオレンジのタバコ。
 とあるタバコ屋のおやじさんに、なんか甘いタバコないですかって聞いてみたら、これなんてどうだいって出してきてくれた。よくわからないけど、試しに買ってみた。ホントにオレンジ、甘酸っぱい。すごいなあ、おもしろいなあ。たぶんもう買わないな。

 以上、いまうちにあるタバコの感想を書いてみました。おしまい。

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