 たばこジャンキー
ここんとこずっとたばこばかり吸っている。たばこのことばかり考えていてあたまがボーッとしてたりする。これはいったいなんなのか、パイプやキセルってのは、そんなにひとを狂わせるヤバイものなのかって、なんか不思議な気がしてたんだけど、よくよく考えてみたら、これはたばこの禁断症状だと気づいた。たばこを吸いながらにして、禁煙時の禁断症状があらわれるとは妙なものだが、おそらくいまのおれはそんな状況だ。 先月12月の中ごろまでおれは、一般的なマイルドセブン系のシガレットのけむりを肺に入れる肺喫煙という喫煙方法で、ずっとたばこを吸っていた。たばこってのは、シガレットの肺喫煙のことだと、ほとんど疑うことなく思っていたわけなんだけど、キセルのけむりをくちで味わう口腔喫煙といわれる方法で試してみたら、どうもそうではないらしいことに気がついてしまった。肺にけむりを入れずに、くちで味わうほうが、断然たばこが美味しくて楽しい。肺に入れたけむりは、味も香りもほとんど失われてしまうけれど、ゆっくりとくちのなかで味わう口腔喫煙は味も香りもよくわかって、たばこを美味しいと感じる。それまでは、肺に入れないフカシタバコはニコチンが効かないのではないかと思ってたけど、ちゃんとしたたばこなら充分効き目があるし、肺喫煙のようなクラクラする感じではなく、もっとフワッといい気分に酔わせてくれる。どうも、本来のたばこってのは肺に入れないフカシタバコのことではないのだろうか…。 そんなようなことを考えながら、キセルやパイプで遊んでいたら、もうけむりを肺に入れるシガレットの肺喫煙が、なんとも気分わるくて、できなくなってしまった。シガレットの肺喫煙は、たばこの味がしないばかりか、過激にニコチンを効かせる方法なので、キセルやパイプでのソフトなニコチン効果の邪魔にもなってしまう。おれの場合、キセルの口腔喫煙を美味しいと感じるまでに、シガレットを3日くらいやめる必要があった。 だもんだから、とくにおれは禁煙するつもりもなかったんだけど、いつのまにかシガレットについてだけはやめてしまっていたのだな。いまシガレットを吸っても、肺にけむりを入れられない。シガレットは、けむりを肺に入れることを前提につくられているから、フカシだけではあまり美味しいと感じられないようだ。 だけど、20年以上つきあってきたシガレット。日常生活の節目ふしめにシガレットがアクセントをつけてくれることで、おれの生活が成り立ってたので、突然シガレットの肺喫煙ができなくなってしまって、いまのおれは、ボーゼンとしているのだ。ああ、おそらくこれが禁断症状。 いまのおれは、キセルやパイプでたばこを吸ってるから、ニコチンは足りていると思う。だからこれは、ニコチンの禁断症状ではないだろう。シガレットで生活するクセがついちゃってるから、そのクセができなくなってしまったことに対する禁断症状だろう。以前、なんどか禁煙を試みたときは、つらくなってもまたシガレットを吸い始めれば、その禁断症状をおわりにすることができたんだけど、こんどばかりはそうはいかない。シガレットを吸っても肺にけむりを入れることができなくなってしまったわけなんだから。  というわけで、シガレットの肺喫煙をやめてしまったかわりに、キセルやパイプの口腔喫煙をもってして、なんとか生活のリズムを立て直さなくてはならない。 またまたキセルとパイプを一本ずつ、買い足し。 キセルは、竜キセルっていわれるいわゆる金属製の延べキセル。おれが持ってるものでは、分解掃除ができる金属製の小粋キセルってのがあったけど、こいつは煙道が狭かったり直角に曲がる部分にヤニがつまりやすいという欠点があった。でも、竜なら大丈夫。煙道もそこそこ太いし、ヤニもつまりにくい。それに、折れにくい金属製だ。これでキセルの買い足しは、とうぶんやらない予定。 パイプはドクタープラムっていうパイプを買った。パイプのいちばん困ったところは、いっかい使ったパイプは、たばこから出た水分がしみ込んでしまうので、数日かけて乾燥させなくてはならないってところなんだけど、ドクタープラムは、その水分の多くが下のフィルターのところに落ちるようにできてるので、わりと乾燥に気を使うことなく使えそうに思ったので買った。乾燥に気を使う一般的なパイプでたばこをやろうとすると、10本20本とパイプをそろえて、ローテーションを組んでパイプをくゆらせるということになるらしいが、そんなに大掛かりな趣味にはしたくないので、少ない本数でパイプをやるには、ドクタープラムみたいなパイプがいいと思った。これでパイプの買い足しも、とうぶんやらない予定。多少のアクセサリーは買うかもしれないけれど。 このふたつをそろえて、すこし気分も落ち着いてきた。たばこのこと以外のこともいろいろと考えられるようになってきた。よかったよかった。 
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