「南の魚3」第1話、したがき中
 2012年1月7日の制作時間、119分12秒。
 マンガ「南の魚」第3巻、第1話のしたがきちゅう。

 月曜日からキッチンタイマー作戦をやめようってことで、いろいろ考えている。

 おれの場合、マンガ家でデビューしてからが、じつはつまづいてしまったわけでさ。あんまりマンガがかけなくなっちゃったんだな。で、そのままイラストレーターとして仕事をしながら、マンガのほうはずっとお留守になっちゃってた。
 それでそのまま20年くらいたっちゃってさ、やっぱりおれはマンガをやりたいなあって思ったんだけど、どうやっていいか、なんだかわかんなくなっちゃってね、まずは毎日マンガをかく習慣をつけようってことでさ、いちにちいっかいマンガについてのラクガキをすることにした。なんでもいいから紙に一枚以上、マンガについてのラクガキをするというルール。これがじぶんのなかで定着するのに、たしか半年くらいかかってる。
 それまでは、かきたいときかいて、かきたくないときはかかないという、気まぐれなかきかたをしてたけど、マンガって、そういう気分だけでは仕上がらない。毎日続ければ、かきたいとき、かきたくないときと、気分は揺れるもの。それもふくめて根気よく続けないと、何ページにもわたるマンガなんて仕上がらないもんでしょ。
 だから、必ず毎日ちょっとでもいいからマンガをかくという特訓をしたんだな。毎日ラクガキ一枚。
 これ、いっかいルールを決めて、じぶんに守らせようとすると、じぶんってのは、ものすごく抵抗する。ホメオスタシスっていうんだってね。新しいじぶんになろうとすると、いままでのじぶんは変わるのが怖くて、ものすごい抵抗を仕掛けてくる。一日一枚のラクガキをするだけでも、体調が悪くなったり、カラダが震えてきたり、涙があふれてきたり。べつのことに夢中になることで、やるべきことを忘れさせようとしたり。じぶん自身がアノ手コノ手を使って、じぶん自身の計画を失敗させようと仕組んでくる。
 ずっとまえテレビで観たんだけど、猿回しの猿の修行。芸を仕込もうとする主人に対して、猿はアノ手コノ手で逆らおうとする。主人は猿の仕掛けるアノ手コノ手をひとつひとつ丁寧に取り除いて、最後にその猿をガッと押さえつけて、主人のいうことをきかせる。そういうのを「根切り」っていうらしい。
 おれも、じぶんに対する「根切り」のつもりで、一日一枚のラクガキを続けてみたわけ。

 で、半年くらいたって、なんとか毎日マンガについてのラクガキをするってことに、抵抗なくなってきてさ。それでつぎのステップとして、毎日、30分以上マンガをかくってことにしてみた。たしかそのときに、キッチンタイマーを導入したんだな。
 まあいそがしいときなどは、毎日30分もかけなかったりもするんだけど。
 それでも続けてたら、だんだんと、ストーリーらしきものまで考える余裕ができてきた。
 半年くらいたって、60ページのマンガがひとつできたので、それは楽書館に載せていただきました。リハビリ第1作。
 そしてそのあと「着香系の男」、「南の魚」と続くわけです。

 キッチンタイマーは、自転車の補助輪みたいなものでね。ないほうが走りやすいんだけど、マンガのかきかたを思い出して、どんどん作れるようになるために、どうしても途中で必要だった。
 いまは、そろそろその補助輪をはずしてみようかなってところなのであります。

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