![]() あなたの好きな色はなんですかっていう月並みな質問があってさ、これはなんだろうってときどき考える。 べつに、どんな色もそれぞれきれいなもんだし、よいと思うわけで、おれの好きな色、そんなの質問されてもなんかよくわからない。だけど、そういう質問にきちんと何色が好きですって答えられるひともいる。そういうひとは、そのじぶんの好きな色にどれくらいの思い入れがあるんだろう。また好きでないほかの色に対してはどんな態度をとるんだろう…。そういうことが、ときどき気になる。 こういう質問は、なんかのアンケートとか占いとかにある紋切り型の質問で、おそらくたいした意味はない。適当にその場の思いつきで答えればいいんだろうな。だけど、その場の思いつきだけで答えてたら、こないだは緑が好きと答えてたけど、今日は赤といってみたりして、そういう統一感のないのもどうだろう。まえもって何色が好きと決めておくべきなのだろうか…。 好きというのとは若干違うのだけど、じぶんは「青」と縁があると思っている。これは子どものころ、姉と弟のふたり兄弟で育ったからだと思う。子どもっていうのは、親がなにかを買い与える場合、兄弟間で不公平があったりすると、すごく気にするものでしょ。だから、コップとか箸とか、そういうものを買ってもらうとき、だいたい姉と同じようなもので、そして姉は赤系の色、弟のおれは青系の色って感じになっていた。「お姉ちゃんは女の子だから赤ね、あなたは男の子だから青」ってよくいわれていたように記憶している。 つまりおれにとって、青は男の子の色なのだ。これはいまでも癖として残っていて、服買うときなんかも、ついつい青系のいろに手が伸びてしまって、赤とかなかなか選べない。 赤い服着ている男のひとみると、勇気あるなーって思う。男が赤い服着るってのは、一種女装にちかいものを感じてしまう。べつに女装が嫌いってわけではないんだが。そういう世界にもちょっと興味はあるのだが。 そんなわけで青って色と縁があるおれだが、この青っていう色は、なんか不思議と使いにくい。服とか車とか家とかそういう物体に、青を使うことって、なんか一筋縄ではいかない難しさを感じることがよくある。 これはなんだろうと考えてみたら、つまりこういうことだと思う。自然界に青い物質というのはほとんどないのだな。自然界に存在する青っていうのは、つまり空の色であったり、海の色であったり、つまり固い物体としての青は、ラピスラズリみたいな珍しい石の色とか、そういうのになっちゃうのだ。自然の青の油絵の具は、やたらと値段が高いのもそれが原因なわけだ。 そして青の反対色はオレンジ。オレンジをくすませると茶色。茶色ってのは、土の色。さびの色。ほこりの色。モノはやがて土にかえる。だからオレンジは物質の色だ。そしてその反対の青は反物質の色。 工事現場の養生シート、いわゆるドカシーは、土の色に対していちばん目立つ青色だ。あのシートの色、趣きがないと嫌うひとが多いのだけど、実用的に考えれば工事現場などではいちばん目につきやすく使いやすい色なんだろう。 ということで「青」は、男の子の色であり、また物質界では珍しい異端の色っていうことになる。 おれの場合、なんとなくじぶんの生活が、青と縁があるような気がして、この色の奇妙な特性に少々とまどいつつも、「好きな色は?」の質問には、「青」と答えればいいのかなって最近思うようになった。 とかなんとかいいながら、じつは、そんな質問、ここ20年くらい、誰からもされたことないんだけど。 |
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