![]() 2011年6月26日の制作時間、97分47秒。 ネーム、約10ページの途中まで。 もうすぐ、7月から、東京都のマンガ規制が始まります。 あんまり関係ないハナシかもしれないけど、ちょと思い出したことを書きます。 むかし、10年以上たつかなあ、電車に乗ってたときのこと。 おれが座った席の右隣に座ったおばさんが、新聞をひろげて読んでいた。ちょっと太ったおおらかそうで、ひとの良さそうなおばさん。給食のおばさん風なイメージ。 ちょうどそのころ、サカキバラナントカと名乗る者の猟奇的殺人事件があったころだったと思う。おばさんが広げて読んでる新聞には、その事件に関する記事が載ってた。このような犯行は、なにやら猟奇的なマンガの影響ではないかというようなことが書かれているのが、目に入った。 おれも一応マンガチックイラストレーターやってるから、ちょっと気になって、チラチラと、その新聞を横目で見たりしてたんだな。 おばさんに気がつかれないように、邪魔にならないように、見てたつもりなんだけど、おばさんは、おれがチラチラとじぶんの持ってる新聞を気にして見ているのに、気がついたみたい。突然おれのほうを振り向いて、新聞記事を見せながら、 「こんなマンガ、法律でぜんぶ禁止にしちゃえばいいのにね」って言った。 いきなりそんなこと言われて、おれとしては、どう答えるべきか、わからなくて、 「どうでしょうかねえ…、ははは…」って、ごまかしてしまった。 もしかしたらおばさんは、この件で、おれと議論したかったのかもしれないが、おれが適当にはぐらかしてしまったので、その記事を示しながら、「こういうマンガがあるから、こんな事件がおこるのよ」って言って、また新聞を読むことに戻っていった。 さて、おれはあのとき、どう答えればよかったんだろう。 おれの感覚では、マンガの影響を受けたかのような、猟奇的犯罪が起きたからといって、そのマンガを規制すれば、犯罪は減るというようなことは、あり得ない、と、考えるのが常識。ずっとそう考えていたので、そうじゃない考え方をするひとが、目の前に現れたってことにびっくりしてしまって、マトモに返事ができなかったんだな。だから、ごまかしてしまった。 それに、電車のなかで、議論しているときに、どちらかが降りなくてはならない駅に着いて、中途半端に議論をやめなきゃなんないときのキモチワルサったらないからさ、だから、おばさんの仕掛けてきた議論には乗らなかった。 でも、ホントはいろんな答えかたがあるはずだよなあ。 「こんなマンガ、法律でぜんぶ禁止にしちゃえばいいのにね」 いえいえ、ぼくはそうは思いません。なぜなら猟奇的なマンガを読んで、犯罪を犯すひとが10000人に1人いたとするならば、9999人は犯してませんよね。それはなぜですか? これを強姦などに置き換えると、イメージしやすいかもしれませんが、強姦マンガを読んで、現実に強姦をするひとが10000人に1人いたとして、残り9999人は、強姦マンガを読んで、強姦しなかったんですよね。だとしたら、9999人の、個別の事情はわかりませんが、ずいぶんたくさんの強姦予備軍が、そのマンガを読んで発散することによって、犯罪を犯さなくて済んだとも考えられませんか?? だとしたら、そういうマンガに救われているひとたちも、たくさんいるはずだと思います…。 んー…、なんか説得力ないかなあ。 「こんなマンガ、法律でぜんぶ禁止にしちゃえばいいのにね」 あのねえおばさん、犯罪を犯すようなやつらってのはさ、なんでもかんでも都合の悪いことは、ひとのせいにする天才なんだぜ。 子どものケンカの仲裁に入ったことあるかい?? AくんとBくんがケンカしてたとして、どうしてケンカしたのってAくんにきけば「Bくんが先に手を出してきたんだよ」っていうし、そんじゃBくんにきけば、「だってAくんがぼくのオモチャを取ったんだもん」、そこでAくんにきくと「Bくんがオモチャかしてくれないんだもん」ってな調子で、延々と相手のせいにするじゃねえか。ちっこい子どもがそういうことを言うのは、まだまだ責任についての勉強中だから、まあ許されるけれどもよ、でも、大人になっても、延々と、そういうふうに、じぶんの責任を受け止められないやつらってのがいるんだよ。 そんでな、そういうやつが、なんか悪いことして警察に捕まったとしてさ、取り調べなんかで、「どうしてこのような犯罪を犯したんですか?」ってきかれたとするじゃん、そしたら、そりゃAくんが先に手を出してきたんだ、Bくんがオモチャかしてくれなかったと、延々とひとのせいにして、責任のがれをするのに決まってるでしょ。だって、そういう答えを引き出すような質問をしてるんだから。 おそらく「わたしのココロのなかから、フツフツと犯罪を犯したいというキモチが湧いてきてやってしまいました」って、スナオにじぶんのやったことを受け止めて答えるひとは、滅多にいないと思うし、よしんばいたとしても、取り調べ官としては、そんな答えに納得するかしら? むしろなにか、家庭環境とか、生い立ちとか、マンガの影響で、とか映画を見てその気になっちゃいましたとか、そんなふうにひとのせいにするほうが、犯人も警察もお互いが納得できるんじゃねえかな。そこでマンガのせいにするってのは、犯人としても身内のせいにして知り合いに迷惑かけたりしなくて済むんだから、都合がいいだろ。 ま、こういうのは想像で言ってるだけだから、実際の取り調べの現場は知らねえからわかんないけど。 だけどねえおばさん。そういうマンガを禁止するっていう発想はさ、犯罪者が本来感じるべき責任を、回避させる理由を与えることにならないかい? んー、うまい返しになってないなあ…。 アナボコだらけの理屈だなあ。 いちばんのアナボコは、ここで話題になっている事件の犯人が、大人ではなくて未成年だったってことで、つまりここでいう責任問題の対象ではないってことか…。 「こんなマンガ、法律でぜんぶ禁止にしちゃえばいいのにね」 あのー、おばさま。お言葉をお返しするようですが、マンガの発明されるまえの時代には、犯罪はなかったんでしょうか?? むかしのほうが、もっともっと猟奇的な犯罪が、たくさんあったんではないでしょうか? んー、この理屈も、きちんと説明し始めるとややこしいなあ。歴史や文化をもっと学ばないといけないなあ…。簡単に説明できない。むずかしい。 昔のほうが、もっともっと残虐なこと、たくさんあったけど、現代と違う価値観で生きてたひとたちと、そう簡単にはくらべるわけにはいかないからなあ。感覚的にはわかっても、コトバで正確に伝えるのはむずかしい。 「こんなマンガ、法律でぜんぶ禁止にしちゃえばいいのにね」 そうですね、あなたのおっしゃるとおり、マンガは、子どもたちにさまざまな影響を与えるとワタクシも思います。 しかし、マンガが子どもに与える影響にくらべたら、親や先生など、身の回りにいるひとたちの影響のほうが、はるかにはるかに大きいのではないでしょうか。直接子どもたちに影響を与えている周囲のひとたちが、マンガなんてちっぽけなものに責任転嫁している可能性を、考えたことはありませんか? って、このハナシを始めると、世のお父さんお母さんがたが、お怒りになるかもしれないな。 お前になにがわかる!?!? 子育ては大変なんだぞうっていわれてしまったら、おれとしては、すいませんっていうしかない。 これも、キチンと説明するのは、たいへんなハナシだなあ。上手に説明できないと、カドが立つし。 マンガには責任ありませんっていうつもりはないよ。念のため。 おっとっと、あんまり長いハナシも書いてらんないや。もっといろいろと、書きたいことあるけれど、時間の都合で、一旦ここらで終わりにします。 このハナシは、また書きたくなったら、続き書きます。 |
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