画材屋さん
 おれがこどものころからのおつきあいのあるとある画材屋さんのおやじさんが亡くなって数年たつんだけど、おやじさんの若いころにかいた絵が出てきたということで、その展示が、先日あって、行ってきた。
 風変わりなおやじさんで、ここらに長く住んでいる美術関係者のあいだでは、あーあのおやじさんねって感じにわかるひと多いのではないだろうか。そのおやじさん、むかし画家を目指していたことは知っていた。 10代のころの作品展。
 1940年代後半の日付けのものが多かったから、おそらく戦争終わってすぐのころ。
  鏡に向かってかいたであろう10代のころの自画像に、おやじさんの面影を探したりしながら観た。それから風景画や、ともだちか家族かをかいたらしい肖像画など。
 この身近なひとをかいた肖像画がいくつもあって、その絵がとても立派で印象に残った。モデルになってもらったのは家族かともだちか、だれだかわからないけれど、かきながらどんな会話がかわされたのかなあなんて想像してしまう。 10代の絵の得意な少年とモデルたち。ちょっと生意気で大人びた色の使いかたや筆の運び。かくほうもかかれるほうも、なんかどこかその気になって気取っている。なんかいろいろ夢みてる。画家になるのさなんて話してたのか、あるいは変わり行く日本の未来について話したりしていたのか。 そういうことを想像しながら観た。

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