ゼロシン
 イラストレーターとか絵書きさんは、みんなシャーペンより鉛筆使って絵をかいているイメージがあるんだけど、おれはシャーペン派だ。鉛筆も持ってるけど、滅多に使わない。たまに気まぐれに鉛筆買ってきて絵をかいてみたりもするんだけど、なんかすぐ面倒くさくなってしまってやめてしまう。おおきな絵をかくときにはいいんだけど、おれみたいなちまちまかくようなのには、鉛筆って向いてないんじゃないかなあ。
 まあそんなような感じのおれなので、ずっとシャーペンを使っているわけなのだが、シャーペンにもあんまりこだわったおぼえがない。文房具屋で面白そうなのを適当に買ってくるだけ。安物ばっかり。
 そういえば、遺跡発掘のアルバイトをしていたときに、遺跡の図面をかくために、製図用のちょっと高いシャーペンを買ったことはあったけど、これは図面上で、線の太さを変える必要があったからだったんだな。いつも使っている0.5ミリだけで太さを変えるのがやりにくくって、0.3ミリの製図用シャープを買った。でもあんまり使った記憶がない。2本のシャーペンを持ち替えながらかくよりも、やっぱり0.5ミリのシャーペンの尖ったところを使ったり、平たいところを使ったりしてかいたほうが速かったし、どういうやりかたしても、あんまりおれは上手な図面書きではなかったので、けっきょくどうでもよくなっちゃった。
 デリケートなこととか、面倒な手間のかかることとか、そういうのは苦手なのだ。

 だけど最近、ちょっとシャーペンにこだわり始めたんです。

 っていうかね、最近おれに向いてないシャーペンがすごく増えた。いったいこれはなんなんだろうって不思議になって、調べ始めたんです。
 ま、そういうハナシをいたします。


  


 うえの写真のシャーペンが、ここ最近、おれが使ってたシャーペンね。(これ、ネオンサインのようにヘンな色に加工してあるのはさ、左から二番目のDr.グリップのグリップがすごい茶色く変色してて恥ずかしいから色を変えてあるのね。タバコ喫ってるとすげー色が変わりやすいんだよこのグリップ。やっぱりお医者さまが考えたってだけのことはあるね)
 左の3本は、ここ数年ずっと使ってたやつ。順番にスーパーグリップ、Dr.グリップ、グラマーミニ。右の2本は、持ち運びに便利かなって思って、最近買ったちいさいやつ。シャキーンって伸びるジャンプポップと、キャップ付きシャーペンのP-Jack。
 これらを適当につくえのうえに転がしといて、いつもそのとき手の近くにあるシャーペンを使って仕事をしているのが、これまでのおれのやりかたでありました。じぶんがいま、どのシャーペンを使っているかとか、そういうこと、全然考えないでやってました。
 だけど、最近すげー芯が頻繁に折れるようになったんですよ。絵をかいているとポッキンポッキンいっちゃう。急にマトモに使えるシャーペンがなくなったんです。はて、これはいったいどういうことでありましょうか。

 じゃ、こっから推理ね。
 このミステリーをものの見事に解きあかしてごらんにいれるよ。

 おれが最近買った2本のシャーペン(上の写真の右の2本ね)は、外出したときに使いたいと思って、ポケットに入れて歩きまわることを想定して買ったものなんです。おれはいままであまり外でメモを取ったりするようなことってしてなかったけど、そういうこともできたほうがカッコいいなってまえまえから思っててさ、じぶんの外出時のメモスタイルってのをここんとこずっと考えていたんです。そんで、その一貫でこの2本も試してみたというわけなんですな。
 でも、このちいさなシャーペン2本、やっぱりおもちゃっぽくて、残念ながらおれには使いにくかった。どちらもおもしろシャーペンとしては好きなんですが、野外メモに使うタイプのものではなかったなあって感じ。
 それじゃあ仕方がない、新しく買った2本が想定していた外出時のメモに使いにくいということで、いままで持っていたシャーペンのなかから、いちばん持ち出ししやすそうなものを筆入れに入れて、いつもリュックのなかに入れておくということにしました。そして、写真左の3本のなかから、いちばんちいさいプラチナのグラマーミニ(写真まん中)を外出時のメモ用のペンに選びました。これなら比較的小さくて持ち運びにもよいし、さきっちょも引っ込むタイプだから危なくないしね。そうだそうだそうしよう。

 そしておれの仕事場は、その後、毎日芯が折れまくるという異常事態にみまわれたわけであります。
 もうここまでくれば、明智くんじゃなくてもわかるよね。

 こんなにポキポキ折れるなんて、なんかへんだなーって思って、シャーペンひととおり並べて調べてみました。
 そしたら、そのリュック待機になって、仕事担当からはずされていたグラマーミニいっぽんだけは、筆圧で芯が引っ込む、いわゆるクッション機能のあるシャーペンだったってわけなんです。そう、これがこのミステリーの答えでした。
 つまりそれまで、どのペンを使っていたかとか、意識して考えたことがなかったけど、ほとんどずっとグラマーミニを使ってたってことなんですな。おれは異常に筆圧が高いので、このクッション機能に助けられて仕事ができていたようなのだ。
 その後、仕事はグラマーミニを使うっていうことで、この問題は解決しました。

 昔はもっとクッション機能付きのシャーペンが一般的だったような気がします。どんなシャーペンを買ってもたいてい弾力性があったと思う。だからいままでシャーペンにこだわらなくても、適当なシャーペンを選んでればたいていおれに使いやすいものだった。
 でもいまは、弾力のないシャーペンがほとんどみたい。あまりクッション機能のあるシャーペンは人気がないのかな、おれにはなくてはならないものだと今回のことで認識したのだが、世の中の流れとは逆向きかもしれません。

 さて、そんなわけで、プラチナのグラマーミニがいっきにお気に入りになったおれは、プラチナのシャーペンについていろいろ調べてみることにしました。いつものようにネットで検索。文房具に詳しいブロガーさんたちの情報に感謝です。
 この100円のグラマーミニっていうシャーペンは、プラチナの「ゼロシン」っていうシリーズのひとつのようでした。いったいゼロシンとはなんぞやっていうと、シャーペンの芯をぎりぎり最後の1ミリくらいまで使える仕組みのシャーペンだそうで。
 でもさらに調べていくと、ゼロシンシリーズにもランクがあってね、高いゼロシンと安いゼロシンでは、芯を最後まで残すしくみがちょっと違う。高いゼロシンはペンのさきっちょでもガッチリ芯をつかむようにできているのだが、安いゼロシンは、芯をつかむというほどではないので、芯を最後まで使おうとすると、おしまいのあたりはくるくると回転してしまう。まあふつうのシャーペンと同じと思えばいいわけで、他より劣るわけではありません、念のため。

 といったような情報を得て、こうなったら高いゼロシンも試してみたいじゃありませんかと、吉祥寺のユザワヤに行ってきました。最近は吉祥寺までは自転車です。以前はたいていスクーターで行ってたんですが、もう停めるとこないですからね。
 うっかり自転車の鍵を持ってくるの忘れちゃったので、地下の駐輪場に停めて、買い物だけしてさっさと帰ってきました。

  

 ということで、買ってきました高い方のゼロシン(まあ高いっつっても1000円ですが)。
 お気に入りのグラマーミニも、もう一本買ってきて2本になりました。リュック待機用と、仕事用ってことでね。

 それで、ゼロシンなんですが、すごく面白い独特の使い心地。
 もちろんクッション機能はしっかりある。これはお店でちゃんと確認してから買ってきました。おれのシャーペン選びのポイントは、まず芯先の弾力性ってことが、今回のことでハッキリしましたからね。
 で、それに加えてゼロシンは、さきっちょで芯をガッツリつかんでいる。この感じがふつうのシャーペンとかなり使い心地が違っていて楽しい。これはシャーペンっていうより、0.5ミリの芯ホルダーでしょうか。不思議な安定感があって絵がかきやすいです。
 このシャーペンは、芯を最後まで使えるっていうことが売りなんだろうけれど、それよりも、絵をかく道具としての芯先の安定感のほうがポイント高い感じがした。画材としてよいなあって思う。
 安いシャーペンでばかり仕事してきましたが、これでちょっと高級になりました。

 おしまい。

  

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