夢のハッカパイプラジオ
 これはおととしだったかな、おれがハッカパイプにハマッてたころにふと思いついた企画です。
 当時、レトロインクの新商品開発会議でも提案してみて、一応ウケたんだけど、なんだかんだで実際の商品になるにはいたらなかった。いわゆるボツネタであります。まあ現実問題、これを商品化するのはけっこうたいへんだと思うので、おれもあまり本気で考えているわけではないんだけど、ワールドワイドのこのホームページで書いておくと、どこかのモノズキなだれかの目に止まったりなんかして、こういうものを作りたいなんて考えるひとが現われることもあるかもしれない。まあ冗談企画だけど、そういうこともちょびっとだけ期待してみたりなんかして書いてみます。
 名称は「ハッカパイプラジオ」です。下に簡単な図をかいてみました。

 

 おれがここでハッカパイプっていうと、たいていのひとは、夏祭りのときなどに夜店で売ってる子ども向けの粉末状のハッカ飴の入っているものをイメージするかもしれない。子どものころ、みんなあれをスースーするの好きだったんじゃないでしょうか。ホイッスルみたいに音が出るやつとか、マンガのヒーローの顔がついているやつとか、いろんな種類がありました。吸うとさわやかな甘い粉がくちに入ってくる。あれ、おれも子どものころ、大好きでした。
 でも、今回とりあげるのは、子ども用のそれではなくて、大人向けのハッカパイプ。こういうものが、どういういきさつで発明されたのか、歴史的なことはおれは全然知らないんだけど、おそらく禁煙グッズとして考案されたものなんじゃないかなって思う。ブライヤー製のパイプ型のものや、ただの筒に吸い口がついただけのようなものに、ハッカクリスタル(薄荷脳)を入れてスースーするもので、涼やかな風がくちに入ってはくるけれど、決して子ども向けのそれのように甘くはない。ハッカのエッセンスを湿らせた綿の入った禁煙パイポと、まあ基本的には同じようなもの(ちょっとだけ高級なパイポってイメージしていただければいいかもしれません)。実際シガレット中毒のひとが、シガレットをやめるためにハッカパイプをくわえて気分を紛らわせようっていう場合は、やっぱり長時間くわえていることになるだろうから、子ども向けの甘い飴のハッカパイプでは、糖分取り過ぎで気持ち悪くなったり、飴の粉を頻繁に追加しなきゃならなかったりして、おそらくあまりよろしくない。だから、大人向けのハッカパイプは、涼しい風を味わうだけで充分なんだと思うけど、やっぱりちょっと物足りなさを感じてしまうことも事実。そのひとのくわえる目的が、禁煙や節煙のためであるならば、ハッカパイプだって、タバコやシガレットと同じくらい、くわえたときの楽しさ、喜びがあってこそそれを達成することができるのではないかという気もいたします。
 ということで考えましたのが、この「ハッカパイプラジオ」でございます(上図)。大人向けハッカパイプのボウル部分に、小型のラジオを取り付けてみました。
 このラジオ、パイプのボウル部分にファンがついてまして、使用者がパイプを吸ったり吹いたりすることで回転して発電するようになっています。つまり風力発電の電池入らず。爽やかなハッカの香りを愉しむことでラジオの電源が入るというわけです。これは便利!! これはエコロジー!!
 それから、スピーカーは、マウスピースに骨伝導スピーカーとなってまして、つまりパイプをくわえることで歯で音を聴くようになっております。いつでもどこでも、他人に迷惑かけることなくラジオを楽しめるってわけです。ヘッドフォンのように耳をふさぐこともないので、ラジオを聴きながらとなりのひとの話を聞くことだってできちゃいます。
 AM放送を聴くために、パイプのシャンクの部分にバーアンテナが入っています。パイプボウル下部をまわすことでチューニングができます。
 FM放送用のロッドアンテナをどこにつけるべきか、これはまだ迷っているんだけど、もしかしたらこれもシャンクからマウスピースへなぞるようにつけて、それを使用者がくちでくわえることで機能するようにできるかもしれません。ちいさなトランジスタラジオで音の入りが悪いときなど、ロッドアンテナを手でつかむと、音が良くなったりすることがありますが、それと同じように、マウスピースアンテナをくちでくわえることによって、人体がそのままFMアンテナになるかもしれません。
 と、まあ以上がこのハッカパイプラジオの仕組みであります。ハッカパイプとしての機能と、ラジオとしての機能、このふたつがお互いにみごとにからみう、すばらしく機能的なパイプであると、みなさんそう思いませんか!?!?

 さて、このハッカパイプラジオ、どんなときにどんなひとが使うのでありましょうか。
 まあまずは禁煙節煙を目指すひとがいちばんに予想されます。このハッカパイプラジオが、ふつうのハッカパイプやパイポと違うのは、ラジオを聴くことができるということです。しかも、パイプをくわえて吸ったり吹いたりしなくては聴こえません。これはどういうことかと申しますと、ラジオを聴きながら、タバコないしシガレットを喫煙するということができないということです。万が一、ハッカパイプラジオをくわえているときに突然の喫煙衝動にかられたとしても、そのとき放送されているラジオ番組が面白かったら、シガレットを吸うために聴くのを中断するくらいならいまは我慢しとこうかなって気になるかもしれません。おそらく、通常のハッカパイプよりも、禁煙節煙成功率があがるのではないでしょうか。
 また、受験勉強中の学生さんにだって使えます。ラジオを聴きながら勉強するのに、くちにくわえるものがあると眠気さましにもなりますし、それがまたハッカの匂いがするわけですから、効果バツグンですよね。
 シガレットに興味を持ち始めそうな年頃の少年少女たちにとっても、オシャレにデザインされたハッカパイプラジオがあれば、こっちのほうがカッコいいやって思うかもしれません。授業をさぼって屋上で、タバコ吸いながらラジオを聴くっていうあの歌のようなうまくいえたことがないこんな気持ちを、タバコがなくても経験できるってわけです。
 それから、パイプをくわえて魚釣りをしたいという優雅なフィッシャーマンにも、自然のなかでのすばらしいひとときを提供することができるでしょう。魚釣りとパイプというものは、文学や映画などではとても相性よく絵になる光景として描写されますが、現実的には、風のある野外でのパイプ喫煙は、それなりの喫煙技術と集中が必要になってきて、釣りどころではなくなってしまうということも多いようです。ですからそんなときこそこのハッカパイプラジオです。くちで音楽を聴きながら、耳は鳥の鳴き声を聞いている。さわやかなハッカの空気が、水面の動きに気持ちを集中させます。ああ、なんとすばらしい日曜日!! 釣果はございましたか?

 以上が、おれの考えた夢のハッカパイプラジオの全貌であります。いかがでございましたでしょうか。
 これがここに書いた通り、いいかんじにできて、3000円くらいで買えるようならおれなら買うかな。高い? 安い? そんなもん? むかしの鉱石ラジオみたいに、奇妙なラジオができたらいいなあなんて思ってみたりして。
 そうそう、レトロインクの会議で、却下された理由は、くちでくわえての骨伝導だと歯に悪いかもってものでした。いわれてみれば、そうかもしれない。健康問題は重要だ。でも、っていうことは、そこんとこクリアできる方法をみつければ、レトロインクでも作れるのかな? どうなんでしょうね??

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